非破壊検査とは
非破壊検査とは、“物を壊さずに”その内部のきずや表面のきずあるいは劣化の状況を調べ出す検査技術のことです。


非破壊試験と非破壊検査
物体や材料の内部の欠陥、不良、または異常を検出するための手法であり、その際に該当する対象を破壊することなく行われます。
この手法は、工学、製造、建築、航空宇宙、自動車産業などのさまざまな分野で広く利用されています。

非破壊試験(Non-destructive Testing=NDT)とは、非破壊的に試験をする場合には『試験』 JIS Z 2300 (0126)
非破壊検査(Non-destructive Inspection=NDI)とは、非破壊試験の結果から、規格などによる基準に従って合否判定を行う場合には『検査』 JIS Z 2300 (0125)

使われる技術はどちらも同じで、試験結果を使って合否判定を行うか行わないかの違いです。

また、非破壊試験で得られた指示を、試験体の性質又は使用性能の面から総合的に解析・評価することを非破壊評価(Non-destructive Evaluation=NDE)JIS Z 2300 (0127)

これらは、日本工業規格(JIS規格)による用語です。


非破壊試験の目的
主な目的は、製造過程や製品の品質管理、安全性の確保、および構造物や装置の保全管理における欠陥の特定です。
非破壊試験は、目視試験、超音波探傷試験、磁気探傷試験、浸透探傷試験、過流探傷試験、放射線探傷試験など、さまざまな技術や手法を組み合わせて行われる場合があります。
材料内部のひび割れ、欠陥、疲労、材料の厚さや密度の不均一性、溶接部や接合部の品質など、様々な問題を検出するのに役立ちます。
非破壊試験は、品質管理や安全性を高めるために不可欠な手法であり、製品や構造物の信頼性を確保する上で重要な役割を果たしています。


主な試験方法と特徴・利点

非試験試験方法概 要適用対象特徴・利点
目視試験
VT
(Visual Testing)
物体や材料を直接視覚的に検査する手法であり、非破壊検査の基本的な手法の一つです

シンプルで直接的:検査者が直接物体を見ることで、表面の欠陥や異常を視覚的に確認することができます。

低コスト:専門的な機器や設備が不要なため、比較的低コストで実施できます。

即座な判断:検査者は即座に欠陥や異常を目で確認できます。小さな異常や不良箇所も直ちに発見できる可能性があります。

広い適用範囲:ほとんどの形状や材料に適用可能です。簡易な手法なので、あらゆる場所で使用できます。

迅速な検査:一般的に目視検査は迅速に行えるため、大量生産ラインなどでの使用が効果的です。

視覚的な判断:人間の経験と訓練に基づく視覚的な判断ができるため、検査者の技能や経験が重要な役割を果たします。

初期段階の問題を発見:早期に目視で問題を発見することで、修理や対策を行うことができます。これにより、より深刻な問題を未然に防ぐことができます。

超音波探傷試験
UT
(Ultrasonic Testing)
物体の内部を超音波を用いて調査し、欠陥や異常を非破壊的に検出する手法です金属材料及び製品、セラミックス、プラスチックなど非破壊的な検査:物体を破壊せずに内部の欠陥や異常を探査できるため、検査対象の保全に役立ちます。

高精度な検出:高周波の超音波を用いることで、微小な欠陥や異常を精確に検出できます。

深部の検査が可能:物体の内部、表面下の欠陥を探知することができ、厚い物体や複雑な形状の検査にも適しています。

リアルタイムの結果表示:即座に超音波が反射される情報を表示し、リアルタイムで異常や欠陥を可視化できます。

多様な素材に対応:金属、プラスチック、コンクリートなど、多様な素材や材料に対応しており、幅広い用途で使用可能です。

定量的なデータの提供:計測された超音波の反射や伝播時間を利用して、欠陥の大きさや位置を数値化し評価することができます。

迅速な検査:相対的に迅速に検査ができるため、製造ライン上などで効率的に利用されます。

予防保全に貢献:構造物や機械部品などの検査に使用され、事故や故障を未然に防ぐことが可能です。

超音波探傷検査は、様々な産業分野で広く活用されており、特に製造業や航空宇宙、自動車、建築などで品質管理や安全性の確保に不可欠な手法です。ただし、操作者の技能や訓練が必要であり、複雑な検査や解釈には経験と専門知識が求められます。

磁気探傷試験
MT
(Magnetic Particle Testing)

導電性の材料表面のクラックや欠陥を検出するための非破壊検査手法の一つです

強磁性材料及び製品

表面の欠陥検出:表面に存在するクラック、亀裂、不均一部分などの微細な欠陥を検出するのに適しています。

導電性材料への適用:主に導電性材料に適用されますが、金属製品や鋳物、鍛造品、溶接部などに広く使用されます。

迅速でコスト効率が高い:比較的迅速に実施でき、手頃なコストで大量の検査が可能です。

実用的であらゆる形状に適用可能:検査対象の形状やサイズに制限がなく、複雑な形状や部品にも適用可能です。

可視化される検出結果:磁気粉や磁気パーティクルが欠陥箇所に集まり、視覚的に異常を目視できます。

高感度な検出:小さなクラックや微細な欠陥も検出できます。

繰り返し検査の可能性:検査後に磁気粉やパーティクルを除去することで、再度の検査が可能です。

広い応用範囲:航空宇宙、自動車、造船、鉄道、製造業などの産業分野で広く使用されます。

磁気探傷検査は、欠陥やクラックの検出において効果的であり、品質管理や安全性の確保に不可欠な手法の一つです。ただし、検査対象が導電性であること、表面近くに欠陥があることが前提条件となります。また、視覚的な評価が必要であり、訓練された技術者による検査が求められます。

浸透探傷試験
PT
(Penetrant Testing)

物体表面の微細なクラックや欠陥を検出するための非破壊検査手法です

金属材料、プラスティック、セラミックス材料及び製品

表面の微細な欠陥を検出:表面に存在する微細なクラックや欠陥を検出し、視覚的に可視化するのに適しています。

広範囲の素材に適用:金属、プラスチック、ガラス、セラミックなど様々な素材に適用可能です。

非破壊的である:物体を破壊せずに欠陥を検出できるため、製品の保全に貢献します。

表面処理後に使用可能:表面処理(塗装、めっきなど)後にも検査が行えるため、表面の仕上げ後の検査に適しています。

低コスト:比較的低コストで実施でき、大量生産ラインでの使用が効果的です。

容易に適用できる:液体浸透検査は、比較的簡単な手法であり、技能を必要とせず、比較的訓練された作業者によって実施できます。

高感度:欠陥やクラックの小さな変化を検出できます。

視覚的な診断:浸透液に含まれる染料や顕色剤により、欠陥が視覚的に強調されます。

浸透探傷検査は、表面の微細な欠陥やクラックを検出する際に有用であり、航空宇宙、自動車産業、金属加工業など、幅広い産業で品質管理や安全性確保のために利用されています。ただし、浸透液を使用するため、材料に対する適切な評価と除去が必要であり、特に食品や医薬品などの特定の用途では注意が必要です。

渦流探傷試験
ET
(Eddy Current Testing)

導電性材料の表面や近傍における欠陥や異常を非破壊的に検出する手法です

金属材料及び製品

非接触での検査:物体の表面にプローブを接触させる必要がなく、非接触で行えるため、物体を傷つける心配がありません。

高速かつ効率的:相対的に迅速に検査ができ、製造ラインでの使用が可能です。大量の部品や材料を効率的に検査できます。

内部検査が可能:表面下の欠陥や異常を検出するのに適しています。物体の内部を調査するため、表面だけでなく深い部分も検査できます。

導電性材料に適用可能:導電性材料に対して特に効果的であり、金属部品や導電性の非鉄金属、合金などに適用できます。

定量的なデータ提供:渦流の変化や振動パターンを評価することで、欠陥の大きさや位置を数値化し評価することができます。

検査対象に影響を与えない:物体に影響を与えずに検査ができるため、検査後の加工や利用に支障をきたしません。

多目的な適用:部品、溶接部、管などさまざまな材料や形状に適用できます。

高感度:小さな欠陥や異常を検出でき、高感度な検査が可能です。

渦流探傷検査は、製造業、自動車産業、航空宇宙産業、鉄道車両、パイプラインなどで幅広く使用されています。しかしながら、導電性の物質に限定されるため、非導電性の材料には適用できません。また、操作者の技能や経験が求められるため、訓練を受けた専門家による操作が重要です。

放射線探傷試験
RT
(Radiographic Testing)

放射線を使用して物体の内部構造や異常を観察・評価する方法です。この手法にはいくつかの種類があります

鋼材や鉄鋼部品・構造物など

特長や利点は使用される具体的な方法によって異なります

内部構造の視覚化:放射線検査は物体の内部構造や密度の異なる領域を視覚化し、欠陥、クラック、異常、または隠れた物質を検出することができます。

非破壊的:物体を破壊せずに内部構造を調査できるため、製品や構造物の保全管理や品質管理に適しています。

高精度で信頼性が高い:高度な画像処理技術を用いることで、精密な検査が可能であり、異常や欠陥の小さな詳細も検出することができます。

幅広い適用範囲:多様な材料や物体に適用可能であり、金属、コンクリート、プラスチックなど様々な素材の検査に利用されます。

可搬性:様々な規模の物体や場所で使用可能な機器があり、可搬型の装置も存在します。これにより、現場での検査や移動式の検査が可能です。

早期検出と予防保全:潜在的な問題を早期に検出し、修理や保全措置を行うことで、機器や構造物の故障や事故を未然に防ぐことができます。

放射線検査には、X線検査、ガンマ線検査、中性子放射線検査などが含まれます。これらの手法は、それぞれ特定の利点や制約を持っていますが、物体の内部構造を観察し、異常を検出する際に重要な役割を果たしています。ただし、放射線を使用するため、安全性対策や適切な訓練を受けた専門家による操作が必要です

それぞれが異なるタイプの欠陥や異常を検出するために使用され、非破壊試験の領域で広く採用されています。特定の産業や用途によって、適した手法を選択することが重要です。

非破壊検査技術は、みなさんの身近なところにあって社会の安全を確保するための技術の一つです。